みなさんは、古代エジプトの 宗教 をご存じでしょうか?
ピラミッドやヒエログリフで有名な古代エジプトですが、その宗教観や神々について詳しく知らない方が多いと思います。
そこで、今回は古代エジプトの宗教について紹介していこうと思います!
古代エジプト宗教
古代エジプト宗教は多神教であり、3000年以上にわたって信仰されていました。この宗教では、自然の力を司る神々が存在すると信じられており、多くの恵み又は災害などは神々によるものだと考えられていました。
こういった宗教観により、人々は神々に対する畏敬の念を中心に生活していました。例えば、人々は神々の怒りを買わないようにお供えを日常的にしたり、神々に気に入られるために良いことを積極的にしていました。
古代エジプトの宗教はとても複雑なことで有名で、その一つの理由として、いくつかの神々は異なる形態を有していたり、複数の役割を担っていたりすることが挙げられます。
この宗教の中心的な存在は様々で、宇宙の理を保つ神々や、よりマイナーな神々(時には「デーモン」、悪魔と呼ばれる)、エジプト外の神々、また、時には先代のファラオなどの人間も含まれることがありました。

左からオシリス神、アヌビス神、ホルス神
古代エジプト宗教における儀式
古代エジプト宗教の正式な儀式などはエジプトの支配者である「ファラオ」が行っていました。この宗教では、ファラオは神々と人間を繋ぐ神聖な存在として崇められていました。このことから、神々がこの世の秩序を保つことがファラオの主な役割であり、神々と人間の調和が実現できることが最終的な役割でした。この役割の一環として、ファラオは多くの神殿を建設し、儀式のためのお供えを国民から集めました。
ファラオは神として崇められていたのか?

エジプトの支配者であるファラオは、ホルス神(後にアムン神)と関係しているとされており、ラー神の息子であるとされていました。また、ファラオは死後、神格化されラー神と同一化されます。さらに、死後のファラオは死と再生の神オシリスとも関係しているとされます。
また、人々は自分の願いを叶えるために、祈りや儀式を個人ですることもありました。むしろ、古代エジプトの後半期、ファラオの影響力が弱まると、国民はファラオへのお供えやお祈りよりも、直接神々にお祈りすることを行いました。
出生の時や子どもに名前を与える時にも儀式が行われました。他にも、人々は「ヘカ」と呼ばれる魔術を使って自然の力を借り、様々なことを行ったとされています。
古代エジプト宗教の宇宙論
古代エジプトの宗教において、宇宙の中心はマアトという概念でした。このマアトとは、真理や正義、秩序などの意味があります。このマアトは固定された永遠のものであり、マアトがなければ世界は崩壊してしまうと考えられていました。また、常にこのマアトを崩壊させ、世界を無秩序にしてしまう脅威があり、社会はマアトを維持するために努力する必要があるとされていました。人々はマアトを維持するために努力をすべきであり、神々は調和を乱さないように役割を果たすべきだと考えられていました。
人々は日々起こる出来事によってマアトの維持を確認しました。例えば、年に一度起こるナイル川の氾濫は、この世の創造を表現していると考えられ、マアトが維持されている証拠だと考えられていました。また、最も重要とされた日々の出来事が、日の出と日の入りでした。朝に日が昇り、夜に日が沈むことは、古代エジプト宗教では太陽神ラーが旅をしていると考えられ、何事もなく朝や夜が訪れることがマアトが維持されている証拠であるとされていました。

古代エジプト人は宇宙人を信じていたの?
古代エジプト宗教では、広い宇宙には様々な存在がいると考えられていました。その宇宙の住人には、神々や亡くなった人間の魂、ファラオなどの神聖的な生きている人間などが含まれていました。
古代エジプト宗教では、地球を平らな大地(大地の神ゲブ)とみなし、その上に空(天空の女神ヌト)がいるとされ、その間には大気(大気の神シュー)がいるとされていました。
また、大地の下には冥界(ドゥアト)と下空があるとされ、その下空のさらに向こうには創造の前の混沌の神ヌーがいるとされていました。この冥界であるドゥアトは死と再生に関係する神秘的な領域であり、太陽神ラーは地上とこの冥界を毎日周回しているとされていました。

天空の女神ヌトがアーチを作っており、下に寝そべっているのが大地の神ゲブであり、
間で支えているのが大気の神シューであり、その横にいるのが他の神々とされています。
古代エジプト宗教の神話と死後
古代エジプト宗教の神話
古代エジプトの神話は、主に古代エジプト宗教の聖歌、儀式や魔術の書物、神聖な人々の葬儀に関する記録、又は古代ギリシア人やローマ人の著作から知ることが出来ます。
主な創世神話には、この世界は混沌の海から始まり、その中から太陽神ラーが誕生したとされています。他の創造神話には、創造の神アトゥムが世界の色々な物質に変化した話や、創造の神プタハによる言葉による世界の創造などが
存在する数ある神話の中で最も重要な神話は、オシリス神とイシス神の神話です。豊穣の神であるオシリス神は厄災の神であり弟であるセト神と仲があまりよくありませんでした。オシリス神は当時、エジプトの王として国民に小麦などの栽培方法を教え、国を豊かにしようとしていました。オシリス神が王であることに不満を感じたセト神は、オシリス神を殺害してしまいました。しかしその後、妹であり妻であるイシス神により、オシリス神は復活しました。復活後、地上で形を保てなくなってしまったオシリス神は、冥界の王として君臨しました。
オシリス神とイシス神から誕生したホルス神は、セト神との王の座の争いに勝利し、エジプトの王となることが出来ました。この神話がなぜ重要なのかというと、ホルス神以降のファラオ(エジプトの王)は全員ホルス神の生まれ変わりであると信じられていました。そしてこの神話により、ファラオの役目は、ホルス神同様、エジプトを厄災(セト神の役割)から守り、平和と秩序を守ることになりました。

古代エジプト宗教においての死後について
古代エジプト宗教では、人間には精神「カー」と霊魂「バー」が宿っていると信じられています。これらカーとバーは死後も存在し続けると信じられていたため、古代エジプト人は死者に食物をお供えしていました。また、カーは死後に死者の肉体から離れてしまうけれど、バーは死後も肉体に残り続けると信じられていました。
古代エジプトにおける葬式とは、このバー(霊魂)を死者の肉体から解放し、カー(精神)と再び融合させる儀式でした。この再融合により、死者は永遠の命を得た魂「アク」として生き続けることが出来ました。
また、バーは夜になると肉体に戻ると信じられていたため、古代エジプト人は死者の肉体を保存しなければいけませんでした。ミイラ化とは、この概念により行われ始めました。ミイラ化をする際、防腐処理や布に包む作業、さらには開口儀式など、様々な儀式が行われていました。
死者の肉体を保存する場所(墓)を示すために、マスタバという長方形の建造物が建てられました。しかし、時代が流れるにつれ、保存場所(墓)はピラミッドが主流になりました。


庶民は死後、どうなるの?
古代エジプト宗教において、庶民の死後については時代によって大きく変化していきました。古代エジプトは古王国(約紀元前2700年~2200年頃)・中央国(紀元前2050年~1800年頃)・新王国(紀元前1550年~1100年頃)の時代によく分けられますが、一番古い古王国時代では、庶民にはカーやバー、アクの概念が当てはまりませんでした。庶民は死後、今世と平行している暗いどんよりした世界をさまようとされていました。

古王国時代後半の紀元前2181年頃、庶民もカー(精神)とバー(霊魂)が存在し、アク(永遠の命)を得ることが出来ると信じられるようになりました。新王国時代には、バー(霊魂)は冥界(ドゥアト)で試練を行い、その後「心臓の計量」と呼ばれる最後の審判を受けなければいけませんでした。この「心臓の計量」では、生きている間の行いと世界の調和(マアト)を比べ、死者のカー(精神)とバー(霊魂)が統合して、アク(永遠なる命)になれるのかを神々が決めました。
古代エジプト宗教における神殿と儀式の役割
古代エジプト宗教における神殿
古代エジプト宗教における神殿とは、エジプト王国において神々が宿るところとして信じられていました。そのため、各神殿には神々を表現する様々な像が置かれました。こういった神殿はお祈りをささげる場だったと勘違いされがちですが、実際には庶民は神殿に入ることを禁じられていました。また、神殿は神々が宿る場所であると同時に、亡くなったファラオが宿る場所でもありました。
時代により、神殿の構造は変化しました。古い神殿の特徴は非常にシンプルな構造で作られていたことです。時代が流れるにつれて、徐々に構造が複雑化し、それに伴い使用される石も増えました。

古代エジプト宗教における儀式と祭り
古代エジプトでは様々な儀式や祭りがありました。数多くの神殿で行われる儀式はもちろん、朝の供物儀式や神話の再演なども行われていました。また、統治しているファラオの権威を祝うために、戴冠式やセド祭も行われました。

こういった儀式や祭りを取り仕切るのは、通常、祭祀や当時のエジプト政府の役人などでした。この役割を担う者はとても神聖な存在として扱われ、ファラオの次に偉いとされました。その証拠に、新王国時代では祭祀を専門職として扱い、得られる富はファラオの富同等とされました。
古代エジプト宗教における動物崇拝

多くの場面で、古代エジプト人は様々な動物を神々の化身として崇拝していました。例えば、プタハ神の化身であるアピスは聖なる牛として崇拝されていたり、猫などは神の化身として扱われたためミイラ化されることもあったそうです。
まとめ
古代エジプト宗教とその慣習や信仰は、古代エジプト文化の重要な部分を形成し、歴史を通じてその影響を継続させてきました。エジプトの神々、神話、宇宙観は、古代エジプト人がどのようにして自然界と人間界を理解し、整理したかを示す鏡のようなものなのです。
いかがでしたしょうか?
この記事を読んで、少しでもアフリカに興味を持ったり、行ってみたいと思う方が増えたら良いなと思います。
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