事実:サハラ以南アフリカの出産時における母子死亡率は10万出生あたりの母親の死亡率が約390件、新生児死亡率が1,000回の成功した出産につき約72件です。
アフリカにおける 出産時の母子死亡率 はかなり高く、特に子供の死亡は半数程度の割合で起こると思っていませんか?
実はその認識、間違いなのです。
ということで、今回は出産時の母子死亡率についてご紹介します。
出産時の母子死亡率
サハラ以南アフリカの母子死亡率は10万出生あたりの母親の死亡率が約390件、新生児死亡率が1,000回の成功した出産につき72件です。これをパーセンテージで表すと、10万出生あたりの母子死亡率は0.39%、1,000出生あたりの乳幼児死亡率は5.4%となります。
2030年までにはこれが1,000回の出産あたり54人に減少すると予想されています。
一方で、世界の母子死亡率は、10万出生あたり223件です。新生児死亡率は、2020年において1,000出生あたり27.4件でした。このことから分かる通り、母子死亡の大部分は低所得国と中所得国で発生しており、これらの国々で2020年に発生した母子死亡の約95%が発生しました。サハラ以南アフリカと南アジアは、2020年の推定全世界の母子死亡の約87%(約253,000件)を占めており、このうちサハラ以南アフリカだけで約70%(約202,000件)を占めています。
そのため、サハラ以南アフリカの母子死亡率は依然として世界で最も高いレベルの一つであり、多くの女性と新生児が出産関連の合併症で亡くなっているのも事実です。
しかし、サハラ以南アフリカの出産時の母子死亡率は、過去10年間で減少しています。具体的には、2000年から2020年の間に、サハラ以南アフリカの母子死亡率は約33%減少しました。この減少は、医療サービスの改善、出産時のケアの質の向上、教育と健康に関する意識の高まりなど、さまざまな要因によるものです。
誤った事実と正しい事実
みなさんは、アフリカ大陸の貧困や紛争といった、ネガティブな印象を受けるものをメディアや新聞などを通してみています。そのため、アフリカでは出産時に子供が生きられる可能性は低いなどといった誤った認識をしがちです。
しかし実際には、10年間の間に母子死亡率が33%減少するなど、アフリカは様々な取り組みを通して改善しているのです。過去のままの認識を変え、急成長するアフリカに目を向けることがとても重要です。
出産時のリスク
死亡の主な原因には、出産中の重度出血、感染症、妊娠中の高血圧(前置胎盤や子癇)、分娩合併症、安全でない中絶などがあります。
さらに、多くの発展途上国では伝統的な出産習慣が根強く残っており、これらは医学的な基準に基づかないことが多く、母子の健康に悪影響を及ぼすことがあります。たとえば、訓練を受けていない伝統的な助産婦による出産介助や、不衛生な環境での出産、文化的信念に基づく医療介入の拒否などが挙げられます。
多くのアフリカの文化では、出産は重要な社会的・精神的イベントと見なされ、特定の儀式や祈りが行われます。これには、先祖への祈り、特定の祝福の言葉、保護を求める儀式などが含まれます。
また、医療設備が不足していることや、特に農村部で医療アクセスが限られていることが、出産時のリスクを増大させています。適切な医療設備や専門医の不足は母子死亡率を高める主要因となっており、また交通の不便さや経済的理由で医療施設を利用できない女性も多いです。
妊娠中の女性の教育水準と栄養状態も、出産時のリスクに大きな影響を与えます。教育の不足は健康に関する知識の欠如や、適切な医療サービスの利用の低下に繋がり、栄養不足は母体および胎児の健康に悪影響を与え、出産時の合併症を引き起こす可能性があります。
これらの問題は、母子の健康と生存率を向上させるために、持続的な注意と改善が必要です。医療アクセスの向上、教育と栄養の改善、伝統的な出産習慣の見直しといった対策が求められています。
死亡率減少のための取り組み
アフリカ諸国で出産時の母子死亡率を減少させるために実際に行われている取り組みは、以下のようなものがあります。
- 基本的な母子保健サービスの普及拡大:多くのアフリカ諸国では、妊婦への定期的な産前ケア、専門的な助産サービスの提供、緊急時の医療対応の強化など、基本的な母子保健サービスの普及に取り組んでいます。これには、適切な栄養指導や健康教育も含まれます。
- 医療従事者の育成と教育:医師、看護師、助産師などの医療従事者の質と数を増やすことも重要な取り組みです。医療従事者への継続的な教育と訓練により、出産時のリスク管理能力を高めています。
- 医療インフラの改善:医療施設の設備の近代化や新しい医療センターの建設により、特に農村部やアクセスの難しい地域での医療サービスの提供を改善しています。
- 保健啓発活動:妊娠や出産に関連する健康情報の普及を促進するための保健啓発活動が行われています。これには、コミュニティレベルでの教育プログラムや、メディアを活用した情報キャンペーンが含まれます。
- 政策とプログラミング:母子健康を改善するための国家レベルの政策やプログラムが実施されています。これには、医療アクセスの改善、財政支援の増加、母子保健サービスの質の向上などが含まれます。
これらの取り組みは、母子死亡率を減少させるための長期的な戦略の一環として、多くのアフリカ諸国で実施されています。ただ、これらの取り組みの効果は、国や地域によって異なり、特に財政的な制約や医療従事者の不足などの課題に直面していることもあります。
日本は?
日本の母体死亡率では10万出生あたり4件の母親が死亡し、新生児死亡率は1,000出生あたり2件の乳幼児が死亡しました。
これらの数値は、日本が先進国の中でも特に母子の健康に関して高い水準を保っていることを示しています。母体死亡率と新生児死亡率の両方が非常に低い水準にあり、これは日本の医療システムの質の高さ、医療アクセスの容易さ、そして公衆衛生と栄養状態の良好さを反映しています。
まとめ
正しい情報を身に着け、自らの固定概念をアップデートさせることで、世界を前向きに見ていきましょう。
今日の事実:
・アフリカでは10年間の間に母子死亡率が33%減少した。
・世界の母子死亡率は、サハラ以南アフリカと南アジアが多い。
いかがでしたしょうか?アフリカについてより多く知りたいと思った人はぜひ、他の記事も読んでみてください。
出典:
- Africa’s advances in maternal, infant mortality face setbacks | WHO
- Maternal mortality ratio (modeled estimate, per 100,000 live births) – Sub-Saharan Africa | WorldBank
- Maternal mortality | WHO
- A woman dies every two minutes due to pregnancy or childbirth | UN agencies
- Maternal Health | WHO | Regional Office for Africa
- Africa’s advances in maternal, infant mortality face setbacks: WHO | UN News
- Japan Maternal Mortality Rate 2000-2024 | MacroTrends
死亡率や寿命に関する他の記事はこちら:
コメント