アフリカに、世界で最も 女性議員 数の割合が高い国がある!?
ジェンダー平等に推進している国といえば、アイスランドを思い浮かべる人が多いと思います。アイスランドは、世界が定めたジェンダー平等の進展を測る一つの指標で、数年にわたり1位を維持しており、特に政治的エンパワーメントと教育達成度で高い評価を受けています。他にもノルウェーやスウェーデン、フィンランドなどヨーロッパ大陸の北欧に属する地域は、社会福祉、教育、健康、政治的参加など多くの面で高い基準を持っており、特にジェンダー平等の面で高い評価を受けていることで知られています。
さて、ここで本題ですが、そんな北欧諸国にも勝る女性議員数の多い国がアフリカにあるのです。
今回は、その国についての詳細や、その他のアフリカ諸国のジェンダー問題における取り組みについて紹介していきます。
世界で最も 女性議員数 の割合が高い国
世界で最も高い割合を誇るのは、女性議員が全体の約60%を占めているルワンダです。
ルワンダは東アフリカに位置する内陸国で、美しい丘陵地帯からなるため「千の丘の国」とも呼ばれます。首都はキガリで、公用語はキニャルワンダ語・フランス語・英語です。1994年のジェノサイドの悲劇を経て、安定した治安と急速な経済成長を遂げている国です1。
そんなルワンダは北欧諸国よりも高い割合といいましたが、その他国との差はどのくらいなのか気になりませんか?そこで、女性議員の割合が高い世界トップ10を並べてみたのが、以下のランキングです。
- ルワンダ: 61.3%ーアフリカ
- キューバ:53.4%ー北アメリカ(カリブ海地域)
- アイスランド:52.3%ーヨーロッパ
- ニカラグア:51.7%ー北アメリカ(中央アメリカ)
- アラブ首長国連邦:50.0%ーアジア
- メキシコ:48.2%ー北アメリカ
- スウェーデン:47.3%ーヨーロッパ
- ボリビア:47.2%ー南アメリカ
- フィンランド:47%ーヨーロッパ
- グレナダ:46.7%ー北アメリカ(カリブ海地域)
(ちなみに、2023年4月時点での日本の国会(衆議院と参議院の合計)における女性議員の割合は約14.37%です。)
上記でご覧の通り、ヨーロッパや北アメリカの地域で多いことがわかり、逆にアフリカは1位のルワンダ以外ランキングに入っていません。
ではなぜルワンダで女性議員の割合が高いのか、その理由ついて詳しくご紹介していきます。
女性議員の割合が高い理由
ルワンダにおいて、女性議員の割合が高い要因はいくつかあるので順に説明します。
- 憲法と法的枠組み:ルワンダの憲法には、議会の下院における女性議員の最低割合を30%に設定する条項が含まれています。この法的枠組みは、女性の政治参加を保証し、促進するための基盤を提供しています。
- 1994年のジェノサイド後の再建:1994年のジェノサイド後、多くの男性が亡くなったり、国外に逃れたりしたため、女性が社会のさまざまな側面で主導的な役割を担うことになりました。この時期に、女性たちは社会の再建と平和構築において重要な役割を果たし、その結果、女性の政治参加が増加しました。
- 女性のリーダーシップとエンパワーメントの推進:ルワンダ政府と非政府組織は、女性のリーダーシップとエンパワーメントを積極的に推進しています。これには教育、キャリア開発、政治参加の機会拡大などが含まれます。
- 社会的変化と意識の高まり:ルワンダ社会全体で、女性の権利と能力を認識し、尊重する文化が育っています。女性がリーダーシップのポジションに就くことが、より受け入れられるようになりました。
- 国際的な圧力と支援:国際社会からの圧力と支援も、ルワンダのジェンダー平等の進展に寄与しています。国際援助機関や外国政府からの支援が、女性の政治参加を促進するプログラムに資金を提供しています。
これらの要因が組み合わさることで、ルワンダは女性議員の割合が世界一多い国になりました。これは、女性が社会のあらゆるレベルで活躍し、リーダーシップを発揮できる環境を作り出すために、法的、政治的、社会的取り組みがどのように影響を与えるかの良い例となっています。
そこで、ここからは女性議員の割合が高いということ以外での、ルワンダのジェンダー平等についてみていきたいと思います。
ジェンダー平等
もちろん、女性議員の割合が多いからと言って、世界で一番ジェンダー平等に向けて推進しているということにはなりません。
最初に述べたように、世界が定めたジェンダー平等の進展を測る1つの指標において、アイスランドが1位を維持しています。その指標でのルワンダは現状、世界で12位を誇っています。
この指標についてですが、ジェンダー平等の進展を測る一つとして、世界経済フォーラム(World Economic Forum)が発行する「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート」があります。このレポートは、以下4つの基準で国々のジェンダー平等の度合いを評価しています。
- 経済参加と機会:女性の労働市場参加率、収入の平等、高い役職への進出の機会などが評価されます。
- 教育の達成度:男女の初等教育、中等教育、高等教育へのアクセスの平等性が評価されます。
- 健康と生存:性別に基づく健康格差、寿命の差などが考慮されます。
- 政治的エンパワーメント:女性の政治参加度合い、政治的リーダーシップの位置にある女性の数などが評価されます。
これらの複合的な指標に基づいて総合的なランキングが作成されています。
ルワンダは政治的エンパワーメントにおいて非常に高いスコアを得ていますが、経済参加や健康、教育の分野では他国に比べて低い場合があります。その結果、12位という位置づけになっています。
女性議員の割合が世界一という意義
とはいえ、やはりルワンダの女性議員数の割合が世界一ということは、アフリカにおいても、世界においても重要な意味を持ちます。以下にいくつかの重要な点を挙げてみます。
- ジェンダー平等の推進:女性が議会で多数を占めることは、ジェンダー平等への強いコミットメントを象徴しています。これは、男女間の機会均等を促進し、性別による偏見や不平等を減らす上で重要です。
- 政策決定への女性の影響力増大:女性議員が多いということは、政策決定過程において女性の声が強く反映されることを意味します。これにより、女性の権利や福祉、教育、保健などの問題がより重視されることになります。
- 社会的変化の象徴:ルワンダでは、1994年のジェノサイド後、国を再建する過程で女性が重要な役割を果たしました。女性議員の比率の高さは、このような社会的変化を反映しており、国の復興と成長における女性の貢献を示しています。
- 他国への模範と影響:ルワンダの例は、他の国々にとってもジェンダー平等を実現する上での模範となっています。世界中の国々がルワンダの例から学び、女性の政治参加を促進するための政策を導入するきっかけになっています。
ルワンダのこのような成果は、女性の社会参加とリーダーシップの重要性を世界に示すものであり、ジェンダー平等の実現に向けた大きな一歩と言えます。
他のアフリカ諸国の取り組み
ルワンダ以外のアフリカ大陸に位置する他国はどのような取り組みをしているのでしょうか?
実は、アフリカ大陸にはルワンダ以外にも女性のエンパワーメントとジェンダー平等を推進している国がいくつかあります。これらの国々では、様々なプログラムや政策を通じて、女性の地位向上と性別間の格差解消に取り組んでいます。
例えば、南アフリカは性別ベースの暴力の撲滅と女性の経済参加の増加に注力しています。セネガルでは女性の権利保護と教育の改善に取り組んでおり、ナミビアは女性の政治参加を促進しています。
また、アフリカ連合(African Union、 AU)は、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを重視しており、そのためのさまざまな取り組みを実施しています。例えば、AUは「アジェンダ2063」という長期的な開発計画を採用しており、この計画では、アフリカが非性差別的な大陸になること、女性と少女が全ての人権を完全に享受できるようになることを目指しています。このアジェンダは、女性と少女のエンパワーメント、そして女性と少女に対する暴力と差別の終結を主な優先事項としています。
また、ほとんどのアフリカ諸国は「女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」を批准しており、その半数以上がアフリカ連合の「アフリカの女性の権利に関する議定書」も批准しています。これらの国々では、民主的選挙が増加し、女性が選挙で成功を収めるケースが増えています。
他にも、UN Womenは、アフリカ諸国における女性の政治参加の促進、リーダーシップの開発支援、性別を考慮に入れた国家計画や予算編成への統合、女性の平和プロセスへの参加の拡大、紛争および紛争後地域での女性向けの重要なサービスの改善など、個々の国に合わせたプログラムを実施しています。
アフリカ大陸全体で、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントに向けた進展が見られる一方で、社会的、経済的、文化的、政治的なマージナライゼーション、ジェンダーに基づく暴力、女性に対する差別、テロリズム、紛争、根本主義などの課題に直面している女性も多くいます。このため、女性と少女の財政へのアクセスとコントロールの向上、教育、健康、情報、サービス、科学、技術、政治的ガバナンス、ビジネス企業での意思決定への関与の改善が求められています。
これらの取り組みは、アフリカ大陸全体でジェンダー平等を実現するための重要なステップですが、各国の文化的、社会的、経済的な状況に合わせた継続的な努力が必要とされています。
まとめ
ルワンダをはじめとするアフリカ諸国では、ジェンダー平等に向けた取り組みが活発に行われているのです。
今日の事実:
- 世界一女性議員数の割合が高い国はルワンダである
- アフリカ大陸ではジェンダー平等を推進する活動が多数行われている
いかがでしたしょうか?アフリカについてより多く知りたいと思った人はぜひ、他の記事も読んでみてください。
脚注
- Rwanda – A Country with 61 per cent Women Parliamentarians – GKToday,
国際議会連盟(Inter-Parliamentary Union, IPU) ↩︎
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